肺がん
肺とは
肺は呼吸をつかさどる気管で、右肺は上葉・中葉・下葉の3区域、左肺は上葉と下葉の2区域に分けられます。鼻や口から吸いこんだ空気中の酸素を体内に取り込んで、二酸化酸素を体外へ出すという重要な働きをしています。さらに細かく言うと肺の中には肺胞と呼ばれる小さな袋状の中に入っていき、そこで血管内へ取り込みと排出が同時に行われます。
肺がんとは
肺がんは、日本人におけるがん死亡率1位です。男女別では、男性1位、女性2位です。肺がんは大きく2つに分類され、小細胞がんと非小細胞肺がんと呼ばれます。それぞれ特徴や有効な薬の種類が変わってきます。肺がん全体のうち小細胞肺がんが10~15%を占め、非小細胞肺がんは80~90%です。小細胞肺がんはがんの進行スピードは速いですが、抗がん剤や放射線治療の効果を比較的えやすいです。非小細胞肺がんは、さらに組織型によって、扁平上皮がん・腺がん・大細胞がんなどがあります。非小細胞は進行のスピードが速くないため、早期発見ができ、手術で完全に切除できれば完治する見込みがありますが、抗がん剤や放射線治療は効果が得にくいです。
発生要因
肺がんの最大の発生要因はタバコですが、アスベスト、ヒ素などの生活環境に起因するものあります。タバコには約60種類の発がん物質が含まれており、肺や気管支が喫煙のたび発がん物質にさらされることにより細胞に遺伝子変異が起こり、この遺伝子が変異した細胞が増加しがんになります。
症状
初期症状はほとんどありません。進行しても、咳や胸痛、呼吸困難、体重減少、血痰、骨痛、むくみなど肺がん特有の症状はありません。そのため早期発見が難しいと言われます。
検査・診断
肺がんの検査は主に、画像検査、血液検査、組織検査に分けられます。
画像検索
胸部レントゲン検査
胸部を正面や側面から見る検査ですが、心臓や骨と重なった部位の病変や小さな病変の発見は難しいです。
CT・MRI検査
エックス線や磁気を使用し、コンピュータで計算して胸部の詳細な画像を作成し、診断する方法です。肺がんでは影がCTよりぼけやすいので使用吸うことは少ない。
PET検査
ブドウ糖に少量の放射性物質を添付し、静脈へ注射します。放射性物質が集まっているところががん病変部位です。がんがブドウ糖を大量に消費する性質を利用した検査方法です。
血液検査
腫瘍マーカー
血液検査を用いてがんを患うと正常より高い数値を示す物質を検知する方法です。
組織診断
痰の細胞やその他の組織を採取して、病理医が顕微鏡で観察します。あるいは、手術室で実際に肺の組織を採取する場合があります。
治療方法
外科的治療(手術)
肺を切り取ることでがんを切除します。がんの位置や大きさによって手術方法が変わります。小さい部分だけを切り取る手術を区域切除あるいは楔状切除といい、さらに切除範囲を広げると肺葉切除と呼ばれます。稀に片肺をすべて取ってしまう場合があり、肺全摘術といいます。また、ほとんどの手術でリンパ節を切除し、がんが転移しているかどうか調べます。
胸部を大きく開けて行う開胸手術と数か所小さく皮膚を切開し、その穴からカメラを入れて行う胸腔鏡手術がありますが、最近は胸腔鏡を用いる症例が増えています。2018年度診療報酬改定により、ロボット支援下内視鏡手術が保険適用になっています。
化学療法
抗がん剤
肺がんの場合プラチナ製剤とよばれる薬剤といくつかの薬を組み合わせて使うことが多く、点滴や内服で投与されます。近年の医療技術の発展により、手術できない状況にあった患者様でも、抗がん剤が著しく効いたことで手術が可能となるケースも出てきています。
放射線療法
放射線療法
多くの場合化学療法と並行して行われます。手術ができない場合の進行抑制を目的に行ったり、手術との併用、抗がん剤による化学療法と併用することもあります。
肺がんに対する放射線療法では、肺炎や食道炎、皮膚炎などが起こることが少なくありません。これは、放射線による一種の火傷と考えられます。